『耳をすませば』

耳をすませば [Blu-ray]

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自分が十代の頃にはこの作品にそれなりに魅力を感じつつも、一方で強烈なくすぐったさを感てて、『リア充氏ね』だの『天沢誠司はストーカー』だの言って距離をとってたんだけど、改めて観ると中々良い映画でしたね。これは反省せねば…。

要するにこの作品では、子供達の原石の可能性を優しく肯定したかったんだな。
舞台の街が異様な程に瑞々しく、端的に言って素敵に描かれているのもそこを支えるためだったんだ。
その視点で見たら、恋物語としての食い足らなさも、あのムズムズするかゆさも大分軽減されて大変好ましく観られました。

まず、この映画、音の使い方にセンスを感じます。
最後に流れるカントリー・ロードが映画のテーマとハマっているのはもちろん、沈黙の無音にセミの亡き声をかぶせたり…etc。
アナクロなバランスに行きそうになるキャラクターやお話をギリつなぎ止めるのに大きな役割を果たしていると思う。

実質のクライマックスはお爺さんに小説を読んでもらう所なのだが、その次に来るラストはあまりの豊かさに昇天しかけた。背中に頭を置く、自転車を降りて押す、そして最後に見る光景。これは良いです。

台詞での言及があるにせよ、ヒロインの雫さんに独り言が多すぎるのは説明的だし不要に気恥ずしくさせて良くないなと思ったりしたが、そこはまあいいかな…。

自分が初見の頃は『お父さんがタバコを吸おうとしてしまう』なんて仕草から感情を読み取る事は知らなかったので、当時と今じゃ感想が全然違うなあ。中々良い映画だと思います