ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!

ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ! [DVD]

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アレクサンダーペイン監督作。「ファミリー・ツリー」の予習として。
ちょっと予想外に自分の心に深く刺さり大切な一本となったよ。★10個献上したっていい。

全体に渡って物凄く楽しい映画で爆笑ストップモーション、確かな絵心等色々特筆すべき点はあって、生徒会選挙っていう地味な題材で良くここまで盛り上げるなと思うが、ラストでは「軟着陸できなさそうな人々」への愛憎入り混じった視線へ深く入り込んでいく。ここが本当に凄いし感動的。

人は生きてる中で頑張り切れなかったり、やる気を無くしたりで道を踏み外したり失敗する。大体の人はそこに対してそこまで賭けてもいないから、踏み外したその後の道でもそれはそれとしてやっていける。
だから申し訳ないけど大マジに頑張ってるトレイシーみたいな人が滑稽に見えたり、ウザかったり、ムカついたりもするんだけど、本作ではそういう人への視線が、哀れみとも言い切れないような、やっぱりムカついてるチンケな自分を逸らさないバランスで描かれている。
ポスター事件の所とかがまた異様に切ないんだよね。
デフォルメしながらもキャラクターの生理や孤独をちゃんと捉えている見事な手腕だよ。
いや、自分はトレイシーとは比べ物にならない程のダメで不真面目だけどプライドだけはトレイシー級にあるからやっぱり観ていて辛いんだよなあ。
トレイシーが全くの他人とは思えないっていうのは皆そうじゃないかなあ。


あと、本作のラストでも示されるんだけど、トレイシーのような人が広範に存在して彼女らに何かホッとできるものが用意されていないっていうのが現代的な不幸なのかもな、とも思ったりする。

ファミリー・ツリー

やはりアレクサンダー・ペインはさすがだなあ。

サイドウェイ」でのフルチンダッシュや「ハイスクール白書」の変顔ストップモーションなどのブラックなユーモアは本作では大分抑制されていて、そういうのが苦手って人にはかなりオススメしやすい作品になっていると思う。

人厄介で迷惑な登場人物(自分含め)に対して時には顔をしかめたり、怒ったりしながらも一貫して愛情持って描く手つきは本作でも共通している。
ラストシーンの絶妙な「照れ」のバランスには本当に感心した。
大体「家族」をテーマに描いた映画って個々人のエゴみたいなものを逸らしたり、そのせいで地に足のついてない観念的な感じになったりしがちな気がする。(最近観た中だと「奇跡」がそうかなー。ディティールは凝ってるのに何かウソくさく見えたりして…)
そんな中で「最も身近な他人」である所の家族にしっかりと向き合った稀有な作品。
ラストの「さようなら、私の妻。私の友。私の苦痛。私の喜び」には涙腺決壊ですよ。ヒネた俺を泣かせたんだから大したもんだ。

この映画、邦題も結構良いなと思った。
本作を観てると家族以上にもっとレンジの広い「縁」について思いを馳せるようになっていて、原題よりも本作の描く縁を端的に表しているようで秀逸な邦題だと思う。

正直、睡眠不足でやや集中力を欠いた状態で観たので全てを十全に楽しみ尽くせた気はあまりしてない。
だから、もう一回観たいなあ。