SUPER 8



※ネタバレしてます
スピルバーグ作品は見てないのが多くて、この映画の成分表を結構な割合で占めるであろう「E.T」「グーニーズ」「スタンドバイミー」は恥ずかしながら未見です。



皆大好きなスピルバーグ作品にリスペクトを捧げた「久しぶりに俺達の親しんだ映画が蘇った!」な映画って事でかなり評判も高いので、スピルバーグの特に「宇宙戦争」「未知との遭遇」にヤられた僕は期待を胸に劇場へ足を運びました。


結論から言うと僕にはかなり食い足りない代物でした。
もちろん、スピルバーグの作品をそんなに観てない僕にも分かる程「未知との遭遇」「宇宙戦争」「ジュラシックパーク」等々のスピルバーグ作品への愛はそこかしこに見られます。
確かにJJエイブラムスはスピルバーグをリスペクトしているし、彼の作品を自らの血肉にしていて本作にもスピルバーグ作品の良さを思い出させてくれる部分は多い。


個人的に冒頭の列車事故と少年達が半ば戦場のようになった街を駆け回る所は面白かった。
あと、何といってもラスト、音楽力と演出力の合体技でほとんど暴力的なまでに感動させるあたりは「未知との遭遇」を想起させられそこがこの映画で一番グッと来た。
音楽のマイケル・ジアッキノはピクサーの「カールじいさん」に続いて本当いい仕事したと思う。



シーン単位では好きな所がいっぱいある映画です。
ただ、それで「スピルバーグ愛に溢れているから傑作!」と言えるかというと映画を習慣的に観初めて1年ちょい僕のような若輩映画ファンからすると「だからって良い映画になるとは限らないんじゃないですか!」と喚きたくもなります。
哀しい事ですが色々な意味で本作「SUPER 8」の中に僕の青春は無かった、と結論せざるを得ません。
この映画では「未知との遭遇」で味わったほとんど神秘体験に近いような感動や、あるいは「宇宙戦争」で味わった恐怖と映画的興奮の洪水を充分に味わえませんでした。
どちらの要素も仕方が無い部分もありますが中途半端でいわゆる「尖った映画」にはなってないと思うのです。



とにかくこの映画、どこに焦点を当てて観ればいいのか非常に困惑しました。
陰謀論、亡き母への思い、少女とのロマンス、仲間との友情、宇宙人、etc…それらのエピソードがシーン単位では端正に出来ている割に全体としてはとっ散らかった印象を受ける。
宇宙戦争」は「宇宙人が襲ってきた!死にたくない!逃げよう」だったし
未知との遭遇」は「宇宙人のUFOを見た!会いたい!追いかけよう!」というはっきりとした軸があったじゃないですか。
白状しますが、派手なシーンを除いた前半は結構眠たかったです。
どこにでも焦点を当てられる作りといえばそうですが、それが映画に「尖ってない」印象を与えるのではないでしょうか。
少なくとも良くできた脚本とは言い難いのではないでしょうか…。


個人的に宇宙人、というかエイリアンの描き方に関しては少し反発を感じました。
宇宙人をひたすら怖い敵として描いた「宇宙戦争」や何故か自分を救ってくれる奴として描いた「未知との遭遇」と比べると、ちょっとナメた楽観がある気がするんですよね…。
そもそもあのエイリアン人を結構殺して食ってるみたいじゃないですか。
なのに「お前の気持ちはよ〜く分かるよ…」みたいになし崩しにしちゃっていいんでしょうか。
(あと保安官とあのおばさんはどうなったのでしょうか…)


僕が感動したラスト、少年はいつも握っていた亡き母の形見を宇宙へ飛ばしてお星にする事で自立し、今度は少女の手を握る、というのはマイケル・ジアッキノの音楽も相まって感動的なんですが、そこに至る論理はどうなってたっけ…?と考えると「ううむ…」となります。


その他、あんだけ派手な列車事故で先生が綺麗な体のまま、あまつさえ生きているのはおかしいだろ、とか細かい突っ込み所はあって、「アポカリプト」や「キルビル」等のシンプルであるが故に娯楽性の高いサンプリング映画の先達と肩をならべるレベルかと言われるとハッキリNO!だとは思います。
しかし、JJエイブラムスの映画愛の博覧会は観てて悪い気はしないし(それが一本の映画として完成度が高いかどうか別問題だとは思いますが)、敬意と愛を高らかに宣言した彼が次にどんな映画を撮るかは期待したくもなったので、トータルでは観て損はしない映画だとは思います。


※チャールズ君には失恋の経験を糧にしてリア充を皆殺しにする良い映画を作って欲しいと思いますね!強いて言うなら僕の青春はチャールズ君にあったかな!