ジェリー


ジェリー デラックス版 [DVD]

ジェリー デラックス版 [DVD]


※ネタバレしてます


人に薦められて観たのですが…申し訳ない!


この映画、面白くする事を放棄しているように感じられた。
ワンシーン、ワンカットは生々しさを表現するという域を遥かに超えて冗長。
絵的にも中々変化が起きない。
キャラクター2人はそれぞれ背景や関係性は全く描かれず、とことん記号的。
更に余計なドラマが発生したりしないための工夫なのか分からないが、キャラクター二人の間でしか通用しないであろう内輪な会話、「ジェリー」という単語(おそらく「ジェリー」にはさほどの意味はない)を用いて観客とは徹底的に距離をとる。
これで面白くなるはずがないのだが、そこはおそらく作り手も織り込み済みなのでしょう。


確かに面白さをブン投げる事によって描けたものもある。
本作全編にある視界はただっ広く広がっているにも関わらず重くのしかかってくる閉塞感や絶望感、これはちゃんと表現されていたと思う。
最初と最後に出てくる「青」も作品が表現したかったものを象徴している。
全て見渡せているはずなのに肝心なものは見えてこない絶望感。
おそらく、上記の通りに全編がひたすら冗長なのもこの絶望感を表現するためではないでしょうか。
何でもいいから「何か起こってくれ!」と思わせる事を意図した映画も珍しい。



ラストの展開、ターバンを巻いた男がペンタゴンのTシャツを着た男を絞め殺す。
これがどうも911を象徴しているように見える。
要するに911は本作で描かれた閉塞感や絶望感の元に起こったんじゃないか、と。
そして、救いは予想外に近くにあったのに…という皮肉。


こうして見ると、全くつまらなかくはない作品ではないと思うかもしれない。
だけど、やっぱり…同ガス・ヴァン・サント監督の次作「エレファント」の方がずっとずっと面白かったし、描きたかったものの突き刺さり度も段違いだったんだよね…。
何も描かれてはいない、とは言わない。
だけど、映画は見世物として考えた場合、到底100分超の鑑賞に耐える代物ではないように思います…。
「エレファント」への助走と考えるならアリっちゃアリかな…。