愛しのローズマリー

これは傑作!思わぬ拾い物!
正直、あらすじを観て「見た目が悪い人は中身が良い!みたいな無責任な話じゃないだろうなあ…だったら俺みたいな人はどうすればいいんですかぁ〜!」といういちゃもんスタンスで観ようとしてた。
婚前特急の感想でも書いたけどそういう話、あんまり好きじゃなくてね。


いや、しかしこの映画においては話が違う。
むしろ、コメディ映画としてとんでもなく高い志に貫かれた映画だと思う。
白状するけど、俺はこの映画観ている間、泣く事と笑う事を延々交互に繰り返してたよ。


コメディの使命は何か観客を縛っているモノを破壊し観客を自由にする事だと思う
その視点で見るならこの映画が破壊しようとしているモノは外見主義
(正確に言うと主義ですらない、本能のレベルで根付いてしまったものだ)
目が小さい、鼻が低い、肥満だ、髪が薄い、毛深い、etc…
これらの醜い容姿に対する蔑視は世の9割9分以上の人間は意識下、無意識下でしてるんじゃないか?
しかも、この蔑視はどこの誰よりもまず自分自身に向けられるから性質が悪く、苦しい。
「違うよ」なんて言う人は胸に手を当てて考えて欲しい。
本当にそうか?
「醜いモノを観る自分の目は一点の曇りなく、顔は全くひきつってない!」とは俺にはとても言えない。
そういう態度の偽善性ははっきりと見て分かるものだし、それは相手を結構深く傷つけている。
だから、せめて自分の心無さに対しては自覚的でいたいと思う。


これほど手ごわいものだからこそ、挑みがいがあるし、挑む価値があるのだと思う。
そして、この手ごわく苦しいモノから(例えわずかな時間であれ)俺を自由にしたこの映画は掛け値なしの傑作だと思う。
甘いファンタジーじゃないか、という話もあるかもしれないが、こういうファンタジーなら大歓迎だ。
このぐらいの前向きさなら持っていたっていいじゃないか、俺はこのファンタジーを胸に生きていきたいと思う。
この映画において火傷で全身ただれた少女を何もいわず抱きしめ、ブクブクに太ったグウィネス・パルトロウに対して「驚いたな…美人じゃないか…」と言ったジャック・ブラックは俺は心底カッコいい男だと思った。
もしかしたら生涯かなわないかもしれないが、彼のような人に俺もなれたらと思う。


※映画とは関係ないけど、この曲を連想した
おっぱいおっぱい言ってるからコミックソングのようだけど
俺にはこれが素晴らしいラブソングに聞こえるんだ