レイジング・ブル

1964年、ニューヨーク、バルビゾン・プラザ・シアターの楽屋で、1人、映画「波止場」のシナリオの一節をくり返すジェイク・ラモッタロバート・デ・ニーロ)の姿があった。彼はかつて「怒れる牡牛」と呼ばれた世界ミドル級チャンピオンに輝いた男だ。

僕の大好きな「ブギーナイツ」の親がこんな所にもいたとは!
不快な奴が主人公ですが、不快な映画では決して無い。素晴らしい映画でした。
全編モノクロの映画で、それはもちろん時代感を出すため、というのもあるのでしょうが、それ以前にオープニングや試合シーンの鮮血等、モノクロだからこそ描ける美しさもあり、単なる時代感以上の美しさを映画にもたらしていたと思います。

同じスコセッシの大傑作「グッドフェローズ」とは対照的に行間で読ませる演出が多い。
全てを味わえた気はしてないのでまた観てみたいと思うが、僕は序盤でジェイク・ラモッタがヴィッキーにキスされた所に出来た傷をソッと指で撫でる所にグッと来ました。
こういう所があるから物凄く嫌な奴が主人公でも最後まで観られる、無視できない映画になっているのだと思います。

そして何よりラスト!モロに「ブギーナイツ」に影響を与えているラストですが、微妙にニュアンスが違う。
ジェイク・ラモッタからは半ばどうにもならない理不尽で、半ば自業自得で、若妻も弟もチャンピオンベルトも離れて行って孤独の牢獄へブチ込まれる。
それでも彼が醜く肥え太った体でかつての「レイジングブル」の如く「アイム、ボス!」と(半ば自分を奮い立たせるように)猛るラストに心を鷲掴みにされた。
正直、的確な言葉が見つからないのですが、「何はともあれ俺は俺だし、人生の主導権は俺にある」という感じか…。ともかくその「タフさ」に胸を撃たれたのですよ…。

実は「タクシードライバー」などの大玉をまだ観てないのだけれど、「グッドフェローズ」「キングオブコメディ」に並ぶスコセッシ映画の金字塔の一つだと思います。
本当に素晴らしい映画でした。