蛇にピアス

蛇にピアス [DVD]

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この題材でここまで退屈に冗長に中身スッカスカに仕上げるのはすげーと思いました。
作り手の手腕と美意識を疑わざるを得ない。

中盤以降から酷くなっていくんだけど、いくらなんでも弛緩し過ぎだし、絶対に必要なはずの身体性が欠如している。
刺青やスプリットタン、ARATA吉高由里子のセックスシーンは全くと言っていいほど退廃的なヤバさや美しさを帯びていない。
セックスシーンを撮るのが一番難しい、って聞いた事あるんだけどこの映画観て心底納得したよ。
(クローネンバーグやパク・チャヌクって上手いんだなあ、そして変態なんだなあ)
そのせいでただひたすらに観念的で弛緩した映画になってしまっていて、もしかしたら興味深く観られたテーマすら台無しにしてる。
「痛み」が重要なファクターであろう作品なのに痛々しさが足りないし、「ヤバさ」が売りであろう作品なのにそこもハンパで退廃美まで突き抜けていない。
これじゃ作品全体が退屈に感じられるのもしょうがないと思う。


俳優に関してはARATAの繊細な感じや、高良健吾の人ったらしな感じは良かったと思います。
僕の大好きな吉高由里子に感じては演技のクオリティ云々でなく、存在感としてちとミスキャストの感が否めなかった。
(作品のために脱いだのは偉いと思いますが…)
やっぱりARATA高良健吾の役が強く魅了されてしまうタイプの重みをもった、このお話を背負い得るヒロインには見えない。
ファンなので大変心苦しいが、終盤あたりはお話自体どうでもよくなってるのも手伝って「キャンキャンうるせーなー」と思ってしまいました。


終盤からどういう理由か分からないがモノローグが入りだしてそれが過度に説明的で嫌だった(名前が分からないから被害届が出せない、って事ぐらい分かりますよ…)。



こうとしかあり得ない!というこだわりを持った変態ではなく、行き届いた誠実さや優しさを持った大人でもない。
そんな作り手の空虚な作品って正直、付き合うだけ時間のムダって気がします。