リリイ・シュシュのすべて

リリイ・シュシュのすべて 通常版 [DVD]

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つまらない!

上にある動画、これ、予告編じゃなくてこの映画のOPなんだけど、俺には果てしなくダサいものに見えて笑ってしまった。
エーテルって何だよ、エーテルって。
リリィ・シュシュジョン・レノンの死亡時刻に生まれたと言うがこの映画の作り手は時差というものを知らないのだろうか。
(「久野陽子」って名前のキャラクターが出てくるけど、これ多分オノ・ヨーコなんだろうな…ダサい、驚異的にダサい…。)
「僕はビートルズですね」のあたりから中学生の幼稚な自意識トーク見てるようで恥ずかしくなったのは俺だけではないはずだ。
そもそもリリィ・シュシュってSalyuじゃん。別に嫌いじゃないけど、現実でそんなカルトに神格化されてる歌手じゃないんだからさ…。

この映画全体に言える事なんだけど、電波飛ばす割にディティールや語り口にこだわりや美意識みたいなものが一切感じられないからノレないんだよね。力ない電波、弱弱しい変態。うん、最悪じゃないか。

異化効果を狙ったであろうピアノは何度も何度も使われてくどく感じるし、「とりあえずリアルっぽく見せるには、こうっしょ」と安易に、これまた何度も使われる手持ちカメラも単に見辛いだけで何の効果もあげてないし、とあるシーンの酷薄さをボカしてしまう副作用まで出ている。ついでに言うとカメラのレンズに水滴がついてたりする。

お話も酷いもの。
忍成修吾の役が終盤グレて、そのきっかけが沖縄での出来事がきっかけっぽく描かれてるんだけど…ヨクワカラナイ…。ちなみにその沖縄旅行のくだりは手持ちカメラで撮られていて無意味に長い。
若者のリアルがどうたら言う割にここらへんの生理をキチンと描けてないって作品のテーマに対して完全に失敗してると思うんだけど…。
ここは邪推だけど、「グレて、ヤンキーを登校拒否に追い込み不良グループの親玉に」とか「髪を染める=少年的なイノセンスの死」って…発想がその…俺には恥ずかしかった…。

あとねー。二人の女の子の顛末がなぜかシャッフルされていてヨクワカラナイ。お話の流れ的に蒼井優が坊主にして、伊藤歩が自殺するんじゃないの?どうやら本来はその通りの展開になる予定だったのを急遽変更したとか。どんな狙いがあったのかは知らないが単純に意味不明でシラけたよ。

展開に関する不備、というか破綻が直されたにしてもそれぞれの描き方に問題大アリだと思う。
売春させられてる蒼井優もレイプされた伊藤歩もリアルな痛みなり何なりが一切伝わってこないためこちらも真剣に思い入れる事ができない。理由は簡単で作り手が真剣に思い入れてないから。伊藤歩に至っては単なる作品上の道具立て(しかも対して効果を挙げてない)にしか見えないからね。
伊藤歩がレイプされている所で市原隼人演じる主人公が泣いてるんだけど、まあ本当に気持ち良さそうでした。


自分の語る物語に陶酔しきっているが肝心な部分がおざなりなせいで、結局作り手の安っぽいプライドやセンスの誇示、自己愛しか伝わってこないって部分は新海誠と共通してる。
ただ、アニメでハッとさせる分、あと「秒速5センチメートル」あたりなら単純に見るのが苦ではない分、新海誠作品の方がまだガッツはあると思うし支持できる。
新海誠の映画は嫌いなものが多いが、この映画は…いや、映画か?イメージビデオか何かじゃないか?
あまりに無防備にダサく拙く幼稚なので、逆に何か言うのが野暮な気さえしてきたよ。