ドリーム・ホーム

ドリーム・ホーム [DVD]

ドリーム・ホーム [DVD]

面白い。
意外と残酷描写ばかりが前に出る映画でなく(いや、てんこ盛りだけど)、主人公が何故このような凶行に至ったのか、その狂っていく…というより何かを見失っていく様子が凄惨な殺人シーンと並行して描かれる。

富める者と貧しい者が固定化され、それぞれが自分の欲のために好き勝手やっている構造があり、大抵の人はそこに対して正面から意識する事を避ける。
だが、一旦意識し、そこを超えようと欲に囚われるとさあ大変、っていう部分は丁寧に描かれているし、だからこそ並行する残酷描写が重みを増す。

ブラックなユーモアを交えつつもそれぞれの殺人シーンは本当に凄惨かつ残酷(かつ面白い!)
絵的には地味だが、時間軸上最初に行われる「殺人」も決定的に主人公が精神的に窒息し何かを見失うシーンとして丁寧に重く、はっきり観客に罪悪感を突きつける形で描かれている。
穿った見方かもしれないが、非常に痛ましい窒息系の殺人描写が二つあるのだけれど、これは主人公の窒息した心理と重ねてるのかなー)
悪趣味なエンターテイメントとしての役割をしっかりと引き受けその役割と十二分に真っ当しつつも、作り手の目線は上品な映画だな、と思った。

最終的なお話の畳み方も見事なもの。
まさか子どもの頃の糸電話のシーンを伏線として拾ってくれるとは思わなかったし、そこの意味の変容も絶大な効果を生んでいたと思う。
人を苦しめる現実とやらも相当にいい加減なものだ、というのは常々俺も思っていた事だし、本作のラストには膝を打った。


上記の真実意外にも「結束バンドは殺人の道具として超怖い」「人は腹を裂かれて腸が出ても意外とすぐには死なない」等等が判明したり、非常に恐ろしくかつ、面白く、かつ有意義な映画体験だった。