八日目の蝉
監督:成島出
個人的に非常に期待できる布陣だった。
監督の成島出監督の「フライ、ダディ、フライ」は昔好きだった記憶があるし、脚本の奥寺佐渡子さんに関しては「学校の怪談」シリーズや「サマーウォーズ」、そして何といっても「時をかける少女」などなど奥寺さんが携わった作品で大きくなったみたいな所もあるかもしれない。
それでいて試写を観た人の評判も中々良かったので観にいった。
非常〜に飲み込み辛い部分が多い映画だった。
台詞が説明的に過ぎる部分が多いように見えたし、特に、最後のある台詞と展開のためにとはいえ、特に島での暮らしの描写は冗長だと思う。
まず、それ単体で魅力を持たせるような突っ込んだリアリティを感じられないし、「薫と一緒に居られる時間はそう長くないのかもしれない」という追いたても薄い。
いや、冗長といえば希和子と薫の絡みのシーンは大半がそうだ。
授乳や島での祭り(?)のシーンや、施設から出て星空を見上げるシーンも素晴らしかった。
だが、それ以外のシーンはちょっと気が抜けてはいないか。
そこらのつまらないテンプレートな幸せ描写を延々観せられるのは個人的に辛かった。
冒頭の裁判で希和子は誘拐の被害者である夫婦に感謝こそすれ謝罪の気持ちは一切ないと言う。
なぜ、自分のした事は悪くないという確信、言ってみれば狂気を持つに至ったか。
そこがこの映画における興味の持続ポイントであるはずだ。
この映画では誘拐の被害者の家庭の痛みもはっきりと描いている。
(それが井上真央演じる薫の視点で回収されていく所と実の母親のエゴを強調して描く所は気に食わないが)
それを超えて、観客に何が良い事を叩きつける力。
それは残念ながらこの映画からは感じられなかった。
少なくとも映画がつまらない僕のモラルに負けてしまっているように思う。
キャストに関して、それぞれ役者は好演していたと思う。
井上真央は今作で役の幅が広がったし、小池栄子のリアリティを損ねない範囲での俗世ずれしてしまっている感じもナイスだ。
永作博美もキャスティング自体に、はなから観客に感情移入の余地を作る嫌らしさを感じなくも無いが、好演していた。
映画自体とは関係ないがこの映画に関して「ここで描かれている事は女性ならではのものだから男性には分からないよ」と言う感想がいくつかあったが、それは違う!と言いたい。
女性特有の苦しみであり悦びであるなら、それを男性観客にも伝えてこその映画だし、そこにチャレンジの価値があるんじゃないのか?
この映画のチャレンジそのものを貶めるような事は本意でないなら辞めた方がいいと思う。
※5月1日追記
この映画が深く刺さらなかった悔しさあまりに変な事書いてしまったことを素直に反省したい。
性別よらず立場により分かる、分からない映画ってあるよね!
正直、周りの評判があんまりにも高いので。
自分の見方に問題があるのかもと思ったりもする。
良かった所は凄く良かったので、全く無意味な映画とは思わない。
個人的に成島監督作品はこれからも応援していきたいと思う。