もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら



原作は未読でアニメ版は「何だコレ…」と爆笑しながら見てました。


Twitterで話題になるとあまり面白さが期待できなくても観に行ってしまう自分のミーハー精神を何とかしたい…。
この映画、全く入ってないってニュースを見るけど自分も含めて7,8人は入っていたので多分「製作側が期待した程には…」って前置きが付くんだと思いますよ。
「映画のマネジメントに失敗してんじゃないか「マネジメント」も大した事ないな」と思わなくもないけど、まあ置いておこう。


見る前に「どうせロクでもない映画なんだろうな…何でオレ今劇場へ向ってるんだろ…」と思っていたのを少し反省するぐらいには作り手たちの頑張りはフィルムに結実していたと思う。
ただ、実写化の企画の時に感じた「随分とまあ安直な…」という気持ちを吹き飛ばす程には至っていない。


この映画の良さを何が一番阻害しているかというと、やっぱり「ドラッカー」要素なんじゃないか。
間違えて「マネジメント」買っちゃって「真摯さ」という単語だけ観て感動しちゃったにしても、「うん、野球の本買いなおせば?」と思うし、「マネジメント」を部活動に当てはめるにしたって「ええ…野球部の部活動って利潤を追求する企業とは別物だよね?」っていう問いにも変な演出とよく分からない理屈で誤魔化される。
部活動って教育の一環なんだから、生徒達がその部活動に打ち込むなかで何か人間的に成長できればそれで良くないッスかね?
何で「顧客」の事を考えなきゃいけないのかサッパリ…話の根幹を誤魔化しすぎなんじゃないのか…。
イノベーションが…」って言って学校中に協力を仰いで、実際協力してもらうシーンも「ああ…洗脳か…」とあまり良い印象をもてなかった。
そもそも、やる気出して練習プランを合理的に練り直したら勝てましたって話が甘すぎねえか?



多分原作のせいなんだろうけど全てのキャラがテンプレート的でリアリティに乏しく、それはアイドル映画として一番可愛く見えなければいけない前田敦子演じる主人公も例外ではなく、逆に「ドラッカー信奉者」というキャラ付けだけはあるため、どれだけ彼女が可愛く撮れてもちょっとサイコに見えちゃうのが残念なあたり…。
だから、そもそものお話に切実なものがない事も手伝って「どうでもいい」という印象がどうしても拭えない。
あんまりキャラが成長したようにも見えなかった。
この映画観て前田敦子やAKBの子のファンになる人は多分いねえんじゃねえかな…。
元からファンの人にはいいでしょうが…。



病弱な子が死んだりして、そこらへんの手つきはやや気を遣われているが、いかんせんキャラがペラいため物語上の要請のために死んだようにしか見えなかった。
で、その後主人公が色々葛藤したりするんだけど、「逃げてるだけ」「逃げちゃダメ」っていう僕が一番大嫌いな台詞で解決しちゃったりする。
そもそも「逃げてるだけ」なんて安い台詞で解決するような葛藤なら元々大した事なかったんじゃないか?
逃げてる事なんて百も承知で、逃げるしかないような切実な理由があるから葛藤にドラマが生まれるんじゃないのかい。


あとは大泉洋演じる監督が選手達に己の非をわびるんだけども、引っ込み思案っぽいAKBの子が意を決して直訴した時にどうして詫びなかったのかよく分からなかったり。
あと最後の流れる初動売り上げ歴代ナンバー1のAKBの曲が映画と全く合ってなかったりと文句をつけられる要素はてんこ盛りだと思う。


でも、この無茶苦茶な企画(アニメ版の出来を見るにほんと原作が最悪なんだと思う)を何とか成立させるために監督初めとする現場の作り手は頑張ったんだと思いますよ。
野球のシーンはそれなりに面白く見られたし、工夫も感じられた。
少なくとも劇場版ルーキーズよりはずっとずっと誠意を感じましたよ。
まあ、ただ、やるなら「もしドラ」実写化以外の企画でやった方がずっとずっと盛り上がったと思うな…。


おそらく、観てない人が鼻で笑うほどひどい映画ではないが、決して誉められた出来ではないと思う。
少なくとも僕の中では割とどうでもいい映画だったかな…