「アナとオットー」


アナとオットー [DVD]

アナとオットー [DVD]


いやあ、面白かった。
「永遠の愛はあるのか」という事をテーマに据えて話は進む。
ポテチかじりながら「純愛なんてあるわけねーだろ」と安全圏からブヒブヒしてる僕みたいな人間が普段がしらけそうな所を上手く一本の作品にしあげていたと思います。


と、いうのも、この映画かなりフィクショナルな作りになっているんですよ。
運命的な出会いをしたアナちゃんとオットーくんはこれまた運命のイタズラで義理の兄妹になっちゃったりするし、その他普通だったら「え、ちょっとご都合じゃね…?」っていう展開も多い。
おそらく、作り手の中に「純愛なんてモノはありはしない」っていう苦い現状認識がまずあって、それを前提として甘い嘘を観客に与え続けているのでしょう。
ご都合主義の連打も「偶然」というのが映画上のキーワードになっているのでおそらく意図的なものでしょう。
ここで観る人を冷めさせないバランスも上手いと思う。


作り手のペシミスティックな現状認識は終盤のアナとオットーの両親の描写に現れている。
特にオットーくんのお父さんの老けっぷりね…。


ラストの着地も見事なものだと思いました。
甘い嘘をつく作品はあくまで虚構は虚構である事をキープして現実に接続するべきではない。
かといって、観客をしらけさせる事もするべきではない。
この相反する二つの命題に対する完璧な答えがラストにあります。
太陽の沈まぬ場所、北極圏の街で起こるある展開によってアナとオットーのロマンチックな恋愛は美しく締めくくられる。(あんなロマンチックな交通事故観た事ないよ!)
作り手の認識の上では純愛というものはない、だがそういう美しいモノを短い間だけでも観ていたいし心に刻みたい。
その命題を充足させる完璧なラストだと思った。
ロマンチックな恋愛を肯定せず、かといって否定もせずに美しく締めくくるにはこれしかないはず。