X-MEN: ファースト・ジェネレーション


まず、今作の監督であるマシューヴォーンの前作「キックアス」について。
近年は現実が虚飾まみれになったせいで、ヒーローというものは脱臭されてしまった。ヒーローは陳腐化してしまっていたのです。(その時流に乗ったのが「ダークナイト」だと認識しています)
「キックアス」は肩のこらなそうなルックで、ヒーローモノをヘラヘラしながら、しかし根っこの所でヒーローの存在に飢えているボンクラ達を劇場に誘い、殴られる痛みと「ヒーローはそもそも狂っているものなのだ」という事を脱臭せずに叩きつける事によって、本物のヒーローの手触りを現代に蘇らせた大傑作だと思っています。



ヒーローモノは俺達一人ひとりが目の前の有形無形の暴力に対しどういうスタンスを取るべきか、という身近な話であって、机上の話であってはならないはずです。
あとヒットガールに殺されたい。



そんなマシューヴォーン監督によって僕が子供の頃ぼんやりと好きだった「XMEN」を映画化したのでバリバリ打ちに行きました!
(ぼんやりと好きだった、程度なのでキャラは覚えているけど、話はあまり覚えてないです。今作前の映画シリーズも未見です)


さすがに「キックアス」のような脳汁でまくりな映画とは諸々の制約故に相成りませんでしたが、中々上質な映画だったと思います。
1800円の元はとれるぐらいに充分に面白かったし、次回作に期待をガッツリ持たせた上で「XMENシリーズってこんな面白かったんだ…ちょっとXMEN関連の作品全部観てみようかな…」と思わせただけでも偉いかな、と。


個人的に興味深かったのはチャールズとエリックのそれぞれの主義主張の限界が少しだけほのめかされていた事です。
チャールズはあくまであの見た目のミスティークを受け入れきれてないし
エリックはミュータント至上主義をかかげながら、人間である母のために復讐を行いました。
ここらへんの正解のない感じがこの映画を、いやもしかしたらXMENをより面白くしてるのかなあと思いました。
個人的には主張が自らの経験に寄っている分、エリック支持ですかね…。


「キックアス」でもいい面構えの役者を揃えていたマシュー・ヴォーンですが今作もいい!
ジェームズ・マカヴォイミヒャエル・ファスベンダーは面構え自体がキャラに直結していて凄く良かったですね
特にケヴィン・ベーコンは役柄的にペラくもなりがちな所をちゃんとカッコ良くすら見える感じに演じていたと思います。


こういうエンターテイメントを観ると「誰が最強か」考えてしまうのですが
僕の結論では瞬間移動能力のアザゼルですね。
逃げられる、っていうのは結構オールマイティに使えるし、不意打ちができるというのは大きなアドバンテージになるかと。
頑張ればショウにも勝てるかもしれません。



最後に多くの人が言及するであろうボーイズラブについて。
少なくとも僕が見た時点ではさほどBL臭は感じませんでしたが
ブログ、Twitter腐女子の友人等々の数々のインセプションを受けた結果
BL視点も手に入れる事ができました!
特に後半以降は…もう…!
以下箇条書きで
・訓練中チャールズとエリックがイチャつくシーンが映画的にも見せ場でしたが、BL的にも見せ場だという事があとから発覚しました。ピストルがチンコのメタファーである事を考えると…「撃て!必ず曲げるから!」のくだりも…ねえ…!
・ハヴォックの訓練シーン。何かを発射する力を制御する、っていうのがもう…ねえ…!
・更にチャールズの「俺に当てるな、君には全幅の信頼を寄せている。」のくだりも…ねえ…!
・↑BL的にチャールズは周りの愛情に応え切れている感じがないですね。
・あとは映画的に最もアガる潜水艦を持ち上げるシーンもインセプション後は巨大なチンコのようにも見えます。「愛のむきだし」以外にも勃起=愛としていた映画ではないようです。
・ラストのミサイルが落ちていく、いや、「萎えていく」くだりは映画的にも切ないし、BL的にも切ないシーンだったのかも知れません。


上記の腐った視点を抜きにしても十二分に面白い映画でした。
マシュー・ヴォーンは「キャラの顔みせも済んだので次作はもっと面白くしてやる」と気合充分のようですので、次作にも期待大です。