モテキ



今年度暫定ワースト1です。更新しました。これ嫌い。
正直、早めに忘れたいのだけれども、この映画の上映が終わった後聞こえる周りからの「良かったねー」の声で大変寂しく哀しい思いをしたので感想を書いておきたいと思う。


とにかく全編にひっきりなしにかぶさるサブカルアピールが鼻について不快な映画だった。
この映画に出演しているスチャダラパーPerfumeソウルセット等々の表現者達に対しては敬愛の念があるし、スクリーンに映るだけでちょっと嬉しくなっちゃう事は否定しない。
しかし、彼らやその他サブカルネタの出し方は小手先で、品がなくて、うるさくて、あざとくて、ちっとも嬉しくない。
「オレはこれが本当に好きなんだ!」でなく「これって良いよね〜」的な内輪な関係を構築しようとする擦り寄りを感じて全くノレなかった。
(居酒屋で酒飲みながら話すならきっと楽しかっただろうが、僕、シラフで劇場にいたので…。)
安全圏からネタを並び立てるばかりで、ちっとも腹を割って話してくれない、作り手が自らの底が知れる事に対してビビッてる表現に(こちらが錯覚しない限り)どうして心を動かされようか?
長沢まさみがかわいいだとかフィッシュマンズは本当に良いとかそんなのは映画を観る前から答えが出てるんだよ。
知恵を絞って工夫を凝らして面白いものを作ってくれよ。Perfumeが好きだとかそういう話を聞きに来たんじゃないんだ。
こちとら、何でも良いからフレッシュな刺激を期待して劇場に通ってるんだよ、劇場を居酒屋と勘違いしないで欲しい。
頼みますよホント…。



内輪ノリといえば去年公開された「エクスペンダブルズ」があるが、あの映画に出ていたアクション俳優達は汗をかいていたし、何より「筋肉バカ」と笑われる事もキッチリ引き受けていたはずだ。
その姿勢があったからこそ、彼らの事をさほど知らないオレでもいくらか楽しめる映画にはなっていた。志は雲泥の差だ。
この映画の作り手は「ソーシャルネットワーク」よりまず「エクスペンダブルズ」の作り手の背中を観るべきだったと思う。

(※「このディティールの薄っぺらな連打こそが作り手によるサブカル系男子に対する批評なのだ」という評を見かけたが「そう観られるように作ってくれれば良かったのに」と思った)



それ自体が映画の価値に収斂しない、本編と一応の関連付けはされているがほとんど自己目的化してるようなディティール(それによって映画がイチイチ停滞する)が多すぎる上にあざとすぎて、本編の話がほとんど頭に入ってこないのだけれども、一応話がないわけじゃない。
ただ、それも心底どうでも良い最低レベルのもの。
だって、この藤本幸世とやらがどうなろうが知ったこっちゃないもの。
パンチドランク・ラブ」におけるアダム・サンドラーのように切実な感情移入ができるわけでもなし、「さんかく」における高岡蒼甫のように実在感があるわけでもない。
こいつがラスト、長澤まさみとイチャイチャする所なんか心底どうでも良かったね。
ファンタジックに演出する意味も分からなかったし、「惚れた女が彼氏持ちでも奪ってでもモノにしろ」というのがこの話の結論なら奪われた(なんで奪えたのかも分からなかったんだけども…)金子ノブアキの顔はもっとバッチリ映してあげないと。
肝心のお話まで内輪でイチャイチャしてる感が強まっちゃうでしょうに。



この映画が上映してる間、心の9割程を「早く終われ」という思いが占めていたので内容は腹すら立たないモノだったが、麻生久美子の役の処理にはカチンと来た。

→一旦良い感じになった藤本幸世が麻生久美子演じる留未子に「オレ、やっぱ長澤まさみがめっちゃ好きやねん。趣味合うし、君重いわ。」と別れを宣告。
→留未子は幸世が好きなのでしがみつくも拒絶される。
→傷心の留未子はリリー・フランキーとセックスした後あっさり吹っ切れる。
→留未子、ニッコニコで吉野家の牛丼パクつく。ついでにおかわりもする。ここで彼女は映画から姿を消す。

…いや、いやね。リリー・フランキーの「男も女も星の数ほどいる」っていう台詞があるからそれがきっかけなのかもしれないけど、ちょっと安易過ぎねえか?
その事を伝えるためだけに「(500)日のサマー」とか映画一本撮れちゃうんだぜ?
こういう失恋の痛みって時間が解決するものだっていうのは分かるけど、いくらなんでも軽すぎると思うのですよ…。


あと、その後こっぴどいフり方をした幸世がその件について落とし前をつけないのも彼にますます好感が持てなくなるあたり。
ジョゼと虎と魚たち」を想起したよ。
麻生久美子に牛丼なんか食わせて安易な救いを与えないで彼女の失恋の痛みを描けば良かったのに。
居酒屋でそんな事したら場が白けちゃうのかい、そうかい。



あと、ここの場面は演出も大変不快で、幸世が留未子に対して「お前重い」みたいな台詞を吐くと、二人の間を太った男がわざとらしく横切るんですわ。あざといよなあ…。
あと、留未子が牛丼食ってる所もわざとらしく米粒が頬についてたりするのよ。なんか、イライラしない?ああいうの。



かようにあざとく全編不快な映画で、上映が終わった後劇場でもtwitter上でも「良かったねー」の大合唱で大変孤独な気持ちになった。
いや、俺だってこの映画を好意的に観られるものなら観たいですよ。
皆と感想を共有できないのは寂しい。
だから、できればどこが良いか映画本編以上に丁寧に解説したレビューがどこかで読めると嬉しい。


正直、僕自身、この映画に対して誠実な客であるとは言い難いと思います。
不快感ばかりが先に立って内容も昨日見たばかりなのにほとんど覚えてないし、喜んでる人も多いから俺が忘れればそれが一番いいのかもしれない。
いいじゃん、皆で同じ所をグルグル回ってれば。