アーティスト

●面白かった。
オスカー獲ってて、映画愛が何ちゃらと言われていたので、「また閉じた感じのつまらない映画なのかな」と構えてたんだけど、それは杞憂だった。
中々野心的な作品だと思いますよ。

●白黒、台詞無し、SE無しで語られる作品なのだけれど、そのコンセプトが一貫されてない反則が一箇所あって、ここに関して評価が割れてるみたいだけど僕は支持したい。
何より演出として効果的だったし、律儀にSEを入れないっていうルールを守り続けた所で映画が面白くわけでもないしね。

●この映画、リピーター割引をやってて、あまり入ってない疑惑があるんだけどもったいない!
台詞こそないもののお話も演出もこの上なく分かりやすいし、何よりテンポが良い。
上映時間もあっという間に感じられるし、映画愛に閉じた面倒くさい映画ではないと思う。

●終盤の畳み掛けるような展開が特に見事。
シーツをはがすと…っていう部分の恐ろしさといい、ヒッチコックの「めまい」の音楽がかかる所といい心底鳥肌立つようなシーンになってた。あと「Bang!」のあたりはこの映画だからできるサスペンス演出だよね。
(そういえば、「めまい」も「人は他人に抱く幻想自体に恋するのであって、人を愛する事とその人を理解する事は全くの別物」という事を描いた作品だった!見事!素晴らしい音楽の使い方だ!)
「めまい」ではそのまま悲しい結末へとなだれ込んでいくが、そこを回避して「めまい」が残した非常に重要な問題に何らかの解決策を提示しようとしたのも誠意を感じる部分。

●もっとも最後の「名案」は伏線も張られているし、画的な幸福感で完全に持っていかれたものの、理屈的な説得力がバシッとあるかというとちょっとクエスチョンマークが残る…かも。

●そんな瑣末な引っかかりがないでもないが、基本的にとっても良い映画だと思う。これが入ってないのはちょっと作り手の誠意や頑張りに対して可哀相だなー。