ステキな金縛り

ステキな金縛り スタンダード・エディション [DVD]

ステキな金縛り スタンダード・エディション [DVD]

作り手の真顔が一切見えてこない、作品に感情を込めようという誠意が一切ない駄作。このようなルックでこの不誠実さは致命的だと思う。

本作であるキャラクターが死ぬが、そこでは人が死ねばそこに当然付随する「悲しい」とか「恐ろしい」とかの負の感情は一切オミットして描かれている。
わずかにでも本作の作り手に登場人物の人生を考えるような誠意があれば、あんな扱いはしないはずだろう。
「人は簡単に死ぬ」という事を悪意を込めて描くのであれば(そういう風には見えなかったが)、死者と生者を安易に馴れ合わせる展開は絶対おかしいし、殺人事件の裁判はどうでもいい茶番となるし、そもそも本作には人の死に対する負の感情に対して挑もうという気概は全く見えない。
ただ単に作り手が人が死ぬ事についてさして掘り下げて考えていないように見えた。

こんなのは氷山の一角で全編に渡ってキャラの扱い、描き方は雑の一語に尽きると思います。
12人の優しい日本人」でも思ったんだけど、いるわけないじゃん…こんな内面が分裂しきった奴ら…。

出来が悪く、倫理も欠き、誠意も見えず、本気もない。
よって安っぽく退屈で俺の人生には一切交わらない作品。
邪推だけど、この作品良いとされてるのって「この作品は立派な作品ですよ」と作り手と観客の自意識を慰撫しようとフランク・キャプラの名前を持ち出したり50年代っぽいルックにしたりするあたりの巧妙さにあるんじゃないかと思う。
本作に感動した方には大変申し訳ないのだが、そう思えてならない。
俺にはこの作品に感動できる生理がさっぱり理解できないのだ。

こことか見ると感動されてる方も多いみたいだし、これを劇場で見たら今以上に暗澹たる気持ちにさせられていたと思う。
中学生ぐらいの時にTVで見た「HR」が面白かった気がするが、まあ、本作を見るになんとなくだったんだろうなあ…。
映画の興行は意外とこういう「なんとなく」で回っている事を確認できた。
映画興行が虚業である側面も重々理解しているつもりだが、そこを直視させられたようで本当に辛かった。
もうちょっとマシなものに騙されたいものだと思いました。