ゾンビランド

ゾンビランド [Blu-ray]

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超面白いってわけでも、気分が沈むほどつまらないってわけでもない。
今年の映画始めにはこのぐらいで丁度いいのかもしれない。
あれだね、ゾンビ映画って良心のブレーキなしで「だって、これもう死んでるし、獣だし」という建前で人体(ゾンビ)破壊ができる所が魅力のひとつなんだな。

2012年の映画 その他

見終わってしばらくしたら印象が変わるという事も多いので。
コメント書いてない映画もありますが大体面白かった順に並んでいます。

・『贖罪』
次点。劇場公開もされたしTSUTAYAでは映画として扱われているし、何より撮ってるのは黒沢清だし映画とカウントしても問題ないでしょう。ゾクゾクする面白さ。未見の方は是非観ていただきたい。

・『アベンジャーズ
次点その2。『日本よ、これが映画だ』と言われた時は少しムッとしたものだが少し予習して本編を観たら『そうか、これが映画だったんだ!!』と納得した。非常に楽しい映画。

・『ブロンソン
次点その3。トム・ハーディ最高。

・『アウトレイジビヨンド』

次点その4。バイオレンスは前作に比べると抑え目ながらストーリーテラーとしての北野武の実力を堪能させていただいた。前作も好きだけど、こっちの方がエンディングがカッコ良い分もっと好き。

・『ダーク・シャドウ
確かにお話は盛り上がりに欠けるのだが、その変具合も含めて好き。
たまにTVでやってたりすると嬉しい映画。

・『サニー 永遠の仲間たち』
広く深く受け入れやすいノスタルジーの要素や、やや、いや、かなりガサツな所があるものの例の曲がかかるシーンは本当に忘れ難いものがあり、シーン単位でなら今年のベスト10に入る。

・『アルゴ』
ハラハラドキドキ!ハラハラドキドキ!後から『フィクション賛歌である』という評を見てなるほどな、と思ったのだけれども、自分はハラハラしすぎてそこに感動する余裕はなかった。人の胸を高鳴らせたもの勝ちですよ、映画は。

・『私が、生きる肌』
言い訳の余地なきド変態映画だが、下品でも下劣でもない、上品な映画。性や執着から逃れられない人間の悲劇。堪能いたしました。

・『哀しき獣』
特に女優の顔をしっかり覚えられなかったのが原因なのか、中々終盤は話に入っていけなかったが、中盤の怒涛のアクションは猛烈にシビレた。
トータルでは『チェイサー』の方が好きだが、こちらも中々光るものを感じる映画。

・『ミッドナイトインパリ』
初見時はピンと来なかったのだけれども、Twitterで人の評を読んで評価が上向いた。Twitterやってて良かったな。もう一回観たいな。

・『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on少女たちは傷つきながら、夢を見る』
本当に倫理を欠いたゲスの極みみたいな映画なのだけれども、西武ドームでのくだりは強烈に脳に焼きついている。

・『ももへの手紙』
中盤で滅茶苦茶泣きました。「人狼」の事イマイチとか言ってすいませんでした。

・『月と少年(短編)』

ほら、ピクサーも短編は相変わらず凄いんだから、やればできるはずなんだって…期待して待ってるって…!

・『青いソラ白い雲』
震災を取り入れた映画の中では一番納得した。
もっとも、万能の答えなど無い中でそれぞれの作り手がそれぞれ納得の行く答えを模索しているわけだから、相対的にどれを支持するかという話になる。
『RIVER』のような論外は置いておくにしても、『ヒミズ』より僕は本作を支持する。

・『ザ・マペッツ』
力技で押し切るミュージカルシーンが見事。
話にあんま入っていなくても勝手に泣けてきてしまうからミュージカル、もとい歌の力はすげーなー、と。

・『夢売るふたり
あとから考えると変だな、と思う部分はあるが、『良い映画を観たな』という充実感はきっちり残してくれた映画。西川監督には”その先”を期待したい。

・『SHAME』
中々面白かった。けど、オレはファスベンダーではないので彼が苦しむのを見て『うわあ…これは地獄だな…』と思う一方、その暮らしぶりやファスベンダーっぷりがちょっと羨ましく思ったり。

・『アーティスト』
手堅く面白い映画だった。これが興行的にコケてしまったのはいち観客として残念だ。

・『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』作り手の気合が刻まれた力作。『レイジング・ブル』や『ブギーナイツ』が好きなので本作もシリーズ内では一番力があると思う。(終盤のカタストロフのシーンでの音楽の感じとかちょっとブギーナイツっぽくない?)

その一方でちょっと暑苦しく感じていた部分も増した気はする。
ラストの立ち上がりはもっとマイティ個人だけのものであった方が良かった気がする。

しかしながら、自分がもっともっと本当にどん底にいる時に味方になってくれそうな映画だ。
そうなった時にまた観よう。

・『ヤング≒アダルト
地元から動いてない人間だからか、『はあ…すんません…』という感想しか…。
あまりノレなかった理由は主人公と重なるところが少ないからか、そもそも『JUNO』も苦手だしディアブロ・コディ脚本と相性が悪いのか、分からない…。

・『桐島、部活辞めるってよ』
世評も高いし、実際良く出きてるし、作り手は最高の仕事をした事を認めるにやぶさかではない。
けど、なーんかね…好きになれないんですよね…。

2012年の映画ベスト10

今年は上位陣はどれも甲乙つけ難く素晴らしいのでランキングは実質順不同のようなものです。
『みんなちがって、みんないい』状態なのです、今年は。



10位『ファミリーツリー』

今年はアレクサンダー・ペインという才能に今更ながら出会えたのが大きな収穫。『ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!』や『サイドウェイ』もそれぞれちょっとどうかと思うくらい面白かった。こうしたほのかな前向きさを描ける作家は強い。



9位『苦役列車

明らかに自分のような人間のために作られた映画で、その狙いすましたような感に今となっては若干の抵抗を感じなくもないのだけれども、結局まんまと引き込まれ泣かされた。作り手は明らかに意識してるだろうが、『モテキ』はこうあるべきだった。
こうした屈折した人間の追い込まれた人生をこそ映画は描くべきなんだと思った。



8位『預言者

ジャック・オディアール恐るべし!時に丹念に、時に超現実的に刑務所内の男の成り上がりと成長を描ききった!
よし!刑務所で頑張れば俺もこの映画の主人公のように一皮むけるのかも…!いや、ダメだ!刑務所に入ったらこういう傑作に出会えなくなる!犯罪はダメだ!地道に頑張ろう!



7位『おおかみこどもの雨と雪

根深い反発が多いのも分かるし、批判のいくつかは頷ける。ぼく自身批判的に検証しようとした感想も書いたものの、やはり本作が好きであるという思いは揺らがず。非常に豊潤な「生と性」の物語だと思う。傑作。



6位『高地戦』

作り手の気合に圧倒される。ぼくはネタバレである所の予告編を事前に何回も観ていて(だから鑑賞に駆けつけたわけだが)終盤の展開をあらかじめ知っていたのだけれども、本編を見ている最中は映画に引き込まれその事は忘れていたので全く気にならなかった。韓国映画界おそるべし。



5位『悪の教典

伊藤英明サイコパスの殺人鬼」という一発ネタに甘んじる事なく、恐ろしく、それでいてどこか痛快な、夢(悪夢)のような映画を作り上げた手腕に感服した。しかし、悩みがなく他者どころか自分すらも愛してない人間というのは恐ろしいものですな。




4位『Jエドガー』

単純に鑑賞中流した涙の量で言えばナンバーワン。映画はこういう人間の人生を見つめてこそのものだと深く確信した一本。良いラブストーリーだった。



3位『ドライヴ』

忘れがたいショッキングなバイオレンス描写と陶酔を誘う美しさの映画。見事と言う他ない。ナルシズムと批判されようが構わない。今年はずっとこの映画のサントラを聞いてた。



2位『スカイフォール

完璧な映画
『まあ、皆さん褒めてらっしゃいますし、良いんでしょうね』程度の期待で鑑賞したのだけれども、それを遥かに上回る大傑作だった。とにかくとにかく超カッコ良い。全編に渡って陶酔しながら観た。自分の中では一つの金字塔。



1位『裏切りのサーカス

初見&原作未読状態では話が完全にクリアには掴めず、そこが歯がゆかった。しかし、肝心なエモーションはビシビシ伝わるし、その欠点を補って余りある美しさ、そして孤独たたえた凄い映画。今思えばアルフレッドソンには『ぼくのエリ』の時点で土下座するべきだった。
ラストにおけるマーク・ストロングの表情だけでも価千金の大傑作だと思う。




1位.『裏切りのサーカス』(トーマス・アルフレッドソン)
2位.『007 スカイフォール』(サム・メンデス)
3位.『ドライヴ』(ニコラス・ウィンディング・レフン)
4位.『Jエドガー』(クリント・イーストウッド)
5位.『悪の教典』(三池崇史)
6位.『高地戦』(チャン・フン)
7位.『おおかみこどもの雨と雪』(細田守)
8位.『預言者』(ジャック・オーディアール
9位.『苦役列車』(山下敦弘)
10位.『ファミリーツリー』(アレクサンダー・ペイン)

2012年の映画ワースト10

※汚い言葉が並びます

今年は特に酷い映画にあたっていないため、単純な出来より「こんなに期待してたのに…」というやや一方的な思いが大きい。よって、ワーストに好きな人も多い映画がどうしても食い込んできてしまうのが心苦しいあたり。


1位『ヘルタースケルター

勢いあまって『へたくそ』の四文字で感想を済ませてしまった映画。
原作漫画が苦手でその違和感の出所を探る意味でもいいかもな、と思っていたが全くそれ以前の問題だった。
あまりの退屈さに悟りの境地に達し「目を閉じる」という鑑賞法を編み出す事ができたのがせめてもの収穫だろうか。(結局目は開けてたけどね)

自分が言うのもなんだが、この映画の監督さんってあまり映画を観ない人なんだろうか?
演技は野放し、編集はガサツ、音楽の使い方は単調。
絵のセンスの無さ、思慮の浅さは今年カッコ良い映画に多く出会えただけに余計に際立って見える。今の話をしてるのにあの"一般女性たち"の描き方はいくらなんでも無いと思うぜ。

話も不要と思われるシーンが思いつきのまま並べ立てられるだけ。
独りよがりで動機を欠いた「おゲイジュツ」というものが、どれだけ人を苛立たせるかがよーく分かった。
この作品に付き合わされた、キャスト、特に沢尻エリカ寺島しのぶ大森南朋の三人(それぞれ良い役者だと思います)が可哀想だ。

公開当時確か賛否両論のような評価の割れ方をしていたと思うが、自分にはなぜこの作品が(あえてこの言い方をするが)許されているのかサッパリ理解できない。
別にどうするというわけではないが、個人的に本作を褒めていた識者の名前はしーっかり記憶しておかないとな、と思う。

世界にはどうしても分かり合えない事もあるのだと作り手の意図せざる所で気付かせてくれる一本。紛うことなきクソ映画でした。

2位『RIVER』
ウンチ。
本作も『ヘルタースケルター』と同様気が遠くなるほど退屈な映画で90分もないのに悠久の時のように感じられるのだが、まあ、『ヘルタースケルター』よりは短いしね…という事で2位。

ビックリする程底の浅い事しか描かれておらず、「下手な映画だなあ」ぐらいに思っていたが、ラストにとってつけたように被災地をフラフラするシーンで全く笑えない映画になった。

震災を取り入れたり、題材にした映画はいくつか作られたが、自分が観た中ではその扱いにおいてさえ突出したヒドさがあると思う。

この映画の監督さんが僕の好きな宮崎あおい向井理で映画を撮るらしいのですが、今から不安で仕方がないです。

ちなみに、『ヘルタースケルター』と『RIVER』は僕のワースト作では別格です。他のものとはケタが2つ、3つ違う。

3位『愛と誠』
この映画を愛する人はすみません。
仮にも傑作『愛と誠』の映画化だろうに、いくらなんでも音楽と脚本が適当過ぎる。
『笑われるのではなく、笑わせる』だなんていう引け腰で『愛と誠』の映画化なんてできるわけがないだろう。一個も笑えなかったよ。
公開前に原作に大感動しただけに本当に観た時の落胆は大きかった。
だって、もう当分はこの原作が映画化される事はないんですよ…。はあ…。

4位『ヒミズ
この映画を愛する人はすみません。
『あ、オレ、園子温苦手なのかも…』という気づきのきっかけになった一作。
ああいう現実がそこらへんに転がっているからといって、そこをすくい上げる事で、ひとまずの平穏にいる人達を揶揄したり否定したりするのは自分の立場からすると頷けるものではないし、それは青臭い事だと思った。
汚くすれば、泥に塗れさせれば現実らしくもっともらしいと思ってそうなのも何か嫌だった。
作り手本人が真剣に作っているのを疑うわけではないが、本作における誇張のオーバーさに俺にはおおよそ誠実さというものは感じられなかった。
冷たい熱帯魚』は実際にそういう現実があるぞ!という事に対してエンターテイメント的な誇張なんだな、という距離の取り方ができていて、実際そういうバランスで作られていたから面白かったのだけれども…。


5位『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』
この映画を愛する人はすみません。
本作には正直呆れたのだけれども、一応TVシリーズと旧劇場版と新劇場版と予習してしまったので一応次作も見ますよ…見ますとも…。

観たあと、しばらくはあんな適当な映画が特権的に許されている庵野監督に馴れ合えるようなソフトさ抜きの憎悪を感じていたけど、安野モヨコ先生の『監督不行届』を読んで大分それは和らいだ。

6位『鍵泥棒のメソッド
この映画を愛する人はすみません。
終盤のちゃぶ台返しは上手さでも何でもない、ただ単にお話上のしんどい所から逃げただけだ。
なので、そこ以降はサスペンスとしてもラブコメとしても作り手への信頼が置けなくなってしまった。何が「キューンキューン」だよ、○ね。

7位『るろうに剣心
この映画を愛する人はすみません。
武井咲が突然正気を失って猫を可愛がり出すシーンなど良いポイントはいくらかあるのだけれども、アクションシーンの編集がいくらなんでも見辛過ぎます。
アクション自体は佐藤健や谷垣アクション監督がガッツを持って見応えのあるものを作り上げたはずなのに編集が足を引っ張ってどうするよ…。

8位『メリダとおそろしの森
…またいつかピクサーの作品に土下座するような日が来る事を信じたい…。
頼むぞ…「モンスターズユニバーシティ」…。

9位『先生を流産させる会』
この映画を愛する人はすみません。
現状、僕はこの映画に対してあまり肯定的な評価はできない。
苦慮されたのだろうけど、あのラストはどうしても首をかしげてしまうな。

10位 『ダークナイトライジング』
この映画を愛する人はすみません。
一般大衆等ディティールの描き込み不足、終盤のガッカリ展開等、ダメな部類に入る映画だと思うが、変に上がりすぎてしまったハードルみたいなものもあるし、もう一回見返すときがあれば「それはそういうもの」として見られる時がくるかな…いや、来ないかな…。

アメイジング・スパイダーマン

こ、こんなの俺が愛し、応援したピーター・パーカーじゃないよ!
え、こっちの方が原作に忠実なんですか、そうですか…。

あるキャラクターが死ぬ重要な所では、ピーターが責任を感じて、持てる力を困ってる人達のために使おう!となっていくようには見えなかった。
むしろ、犯人探しをしている中でマスクをかぶってスパイダーマン誕生!みたいな音楽を流すので、どうもズレた印象が否めず…。

テーマ的な部分に関しても、いい気なもんだな、という印象から最後まではみ出る事は無かった。特にラストは正直不愉快ですらあったよ。それは自分だけの秘密にしなきゃダメだろ!

主人公の佇まいにはペーソスがなく、あまり応援したくはならない。
ヒロインはエマ・ストーンが演じているのでカワイイのだけれども、「ああ、ヒロインね」以上のキャラクターには見えて来なかった。

アクションシーンは結構楽しいので、ここで結構救われてる映画だとは思う。
思うに、マーク・ウェブ監督の資質や興味がスパイダーマンっていう題材と合ってそうで実はそんなにマッチしてないんじゃないか?
主人公とヒロインのやり取りは良い感じの生々しさがあって面白いのだけれども、全体としては散漫で窮屈だった。

ブロンソン

ブロンソン [DVD]

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画も端正で音楽の使い方にも超カッコいい。
こういう基礎体力が高い映画は良い映画だなあ、と思います。

でも、何よりこの映画の魅力なのはトム・ハーディが見事に演じきったブロンソンでしょう!

ブロンソンは自分を縛り、罰そうとする者はぶん殴り、知った風な事をぬかす奴にはつばを吐きかける。
この暴力男の半生には前向きなポジティブさがあるし、その佇まいはチャーミングですらある。
自分の衝動に無意識レベルで忠実な彼は生き方そのものが(その狂いっぷりも含めて)素晴らしく自由な芸術だ。

どこかタガが外れていたり、狂っていなければ到達できない境地が美しさがある事を改めて気づかせてくれる映画。
傑作です。